2013/12/08

ガチサイボーグのはなし

 いられらは石ノ森章太郎の「サイボーグ009」の大ファンです。
「サイボーグ」という言葉に、とにかく目がありません。

先日ついったーのホットワードに、気になる言葉が並んでいました。
「この人が世界で初めて政府に認められたサイボーグです」
こんな長ったらしいキーワード、ネタだろうが、事実だろうが、フィッシングだろうが、とりあえずクリックしますよね。一体何のことかというと、Gizmode Japan経由で広がったKotakuJapanの記事の抜粋のようでした。

今回もまったくゲーム関係ございません。が、KotakuJapanの記事のなかで、詳しくはDezeenでどうぞ、とあったので、気になる記事の大元となるDezeenさんに掲載された、ニール・ハービソンさん(ガチサイボーグ!)へのインタビューを翻訳してみました。サイボーグやばい。手短に概要だけを知りたい方はGizmodeJapanさんへ、中くらいの記事を読みたい方はKotakuJapanさんへ、どうぞ!


サイボーグ人間「人間のテクノロジー化が始まる」


参照元記事:http://www.dezeen.com/2013/11/20/interview-with-human-cyborg-neil-harbisson/


元記事及び画像の著作権は配信元の記者及び作家または団体に帰属します。
20131120日オリジナル記事配信



テクノロジーは「人間の能力や知識、リアリティの知覚能力を広げるため」人体へと統合されていくだろう。そう話すのは、人類史上初めて公的に認められたサイボーグ人間である、ニール・ハービソン(Neil Harbisson)さんだ。

Photograph by Dan Wilton
「僕らは将来、ツールとしてのテクノロジーは使わなくなると思うんです。その代わり、体の一部として、テクノロジーを用いるようになるんです。」そう話すのは、バルセロナに生活の拠点を置く、ハービソンさんである。ハービソンさんは、頭蓋骨の後ろにあるチップに接続された、ヘッドマウント・アンテナを装着し、このアンテナで色彩を知覚しているのだ。「あと数年もすれば、今よりずっと世の中に浸透することになると思います。」
ハービソンさんは、「アイボーグ」というこのヘッドセットを装着し、色覚異常で世界が白黒に見えてしまうという、視覚障害を克服した。アイボーグにより、色彩は音に変換され、ハービソンさんはその色彩を「聞く」。この点において、ハービソンさんはサイボーグ、または人工頭脳生物(天然の部位と人工的に作られた部位の両方を持つ生物)と呼ばれている。
ハービンソンさんによると「自分をサイボーグだと感じるまでには、段階」があったのだという。「始めは、アイボーグから僕に何か情報を送ってきているのを感じました。それから、それが知覚だということがわかり、しばらくすると、それが感覚として伝わってきました。色彩の感覚がわかるようになったころから、僕は夢をカラーで見るようになって、この装置も僕の体の一部なんだと感じるようになりました。」

Photograph by Dan Wilton
「音は骨を通して、内耳に伝わります。それが、各音の正弦波の違いによって、色彩の違いとして解釈できるようになっています。」
ハービソンさんは、後頭部についているUSB電源ケーブルでアイボーグを充電する。「(将来的な)目標としては、電気を使わない方法で、自分の体のエネルギーを使って(頭の中の)チップを充電する方法を見つけたいと考えています。」ハービソンさんは説明してくれた。「血液循環か、運動エネルギーが使えそう。将来は脳が使うエネルギーでチップを充電できたらいいと思う。」
「技術を利用したり、常に装着するのではなく、僕たち自身がテクノロジー化していくんです」と、ハービソンさんはDezeenの取材に答えた。「こんなすごい方法でリアリティを知覚するなんて、人類の歴史の中でも本当にエキサイティングな時代ですよ。」

Photograph by Dan Wilton
英国当局との長い論争の末、現在ハービソンさんのパスポート写真には、アイボーグを装着したハービソンさんの姿が写っている。これはつまり、ハービソンさんが世界で初めて、政府の公認を得たサイボーグになったということだ。
2010年、ハービソンさんはサイボーグ基金(CyborgFoundatoin)を立ち上げた。サイボーグ基金とは、「人間がサイボーグとなる手助けをし、人間の体の一部として人工頭脳学を利用することを推進し、サイボーグの権利を守り、人々が知覚補助装置を作り出すことを奨励すること」を綱領とした組織である。
ハービソンさんは、昨今の技術的進歩によって、人工頭脳を移植し、個々の能力を強化する人々の数が急増するだろうと考えている。そして、人間であるということがどういうことか、徐々に変化していくだろう、という。
「僕たちの本能や、身体は変化していく」ハービソンさんは言う。「技術を人体に取り入れていくと、体はそれに適用しようと、変化しなくてはならなくなります。体は変化して、新しく取り込んだものに順応しようとするんです。僕たちがこの変化に、どう順応していくか、とても興味がありますね。」

充電中のニール・ハービソンさん Photograph by Dan Wilton
サイボーグ人間にはほかにも、耳を腕に移植したパフォーマンスアーティストである Stelarc さんや、RFID(電波による個体識別)チップを皮膚の下に埋め込んだことで、照明やドアやヒーターなどの電子機器を操作することができる「世界初のサイボーグ人間」、ケヴィン・ウォーウィックさん、腕に自身の体を監視する装置を取り付け、その装置そのものを自分で管理している「DIY サイボーグ」、ティム・キャノンさんがいる。
しかし、ハービソンさんはキャノンさんのサイボーグとしての資質に対し、懐疑的だ。「ティムは、テクノロジーを利用する者として、僕らとはだいぶ異なります。テクノロジーを体に埋め込むことで知覚能力を拡張している、とは言い難いと思うんですね」と、ハービソンさんは言う。キャノンさんは体内に持つ装置によって、自身の体温を知ることができるが、これは「サイボーグ基金が関心を寄せる、感覚・知覚を増長させるプロジェクト」という点に反している。
ハービソンさんは、アイボーグを使って一連のアート作品を手掛けた。人の顔を様々な色相でスキャンし、その音色で短い楽曲を作ったりして、音のポートレイトを描く、というものだ。
アイボーグはほかにも、建築物を「聴く」ことも可能にした。なかでもカタルーニャ出身の建築家、アントニ・ガウディの作品がハービソンさんのお気に入りだそうだ。「ガウディの建築の中に表現されたすべての空間が、非常におもしろいんです。本当に、ただただミュージカルのようなんですよ。」ハービソンさんは言う。

Photograph by Moon Ribas

以下はハービソンさんとのインタビュー、そのすべてである。


ロス・ブライアント(記者):ではまず、自己紹介をお願いします。あなたは何をしている人ですか?

ニール・ハービソン:僕は、色彩という感覚を認識させてくれる、アイボーグを装着した、アーティストです。色彩のコンサート、ということをやっています。僕の目を大音量のスピーカーに接続して、人の顔を見ることで音のポートレイトを奏でるんです。あと、展覧会も開いたりします。音楽の色や、音の色を展示しています。僕は 音楽を絵に置換するんです。それと、バルセロナを拠点に、サイボーグ基金の活動にも取り組んでいます。テクノロジーを人体に移植することで、人の感覚を増長させるようなことに繋がるプロジェクトも開始しました。

ロス・ブライアント(記者):色が聞こえるとは、どのような感じに?説明してもらえますか?

ニール・ハービソン:僕の頭についてるこのアンテナで、目の前にある色彩の光周波数を受信します。受信した周波数は、後頭部にあるチップに送られ、光周波数を可聴周波数へと置き換えていくんです。それが、骨伝導で伝わってきた色を見る、ということです。

ロス・ブライアント(記者):アイボーグのおかげですね。では、どうしてアイボーグを開発しようと思ったんですか?なぜサイボーグになろうと?

ニール・ハービソン:僕は生まれながらの全色盲なんです。だから子供のころから、色彩がどんなものか認識したかった。それで、10年前アダム・モンタンドンに出会ったとき、テクノロジーで人の感覚を拡張することができるんだって、気づいたんです。僕はアダムに、僕の感覚を拡張するプロジェクトを始めないかって、相談したんです。それが今回のプロジェクトの始まりですね。試作第1号は、ソフトウェアと5㎏のコンピュータ、それとヘッドフォンによるものでした。どうにかこの装置を小さくできないか、もっと使いやすいものにならないか、他の開発メンバーも探そうとしました。それが今は、チップとセンサーによるこの形になったんです。

ロス・ブライアント(記者):アイボーグを作り出す以前は、色が見えないということで、ハービソンさん個人的にどんな影響がありましたか?

ニール・ハービソン:色が見えないからって、自分が障碍者であるという感じはしませんでしたよ。ただ、社会的に締め出されているようには感じていました。その疎外感で、色の存在そのものを嫌うこともありました。だけど、だからと言って、色の存在を一生無視し続けることができるかといったら、そうじゃない。たとえ、僕にはそれが見えなくとも。

Apple の共同設立者、スティーブ・ウォズニックさんのサウンドポートレイトを制作するニール・ハービソンさん。

ロス・ブライアント(記者):アイボーグの充電はどうやるんですか?無線接続?それともご自分を直接電源に繋げるんです?

ニール・ハービソン:僕の後頭部に、USBのようなコネクタがついていて、僕自身をコンセントに繋ぎます。僕の充電には3時間くらいかかりますね。それでだいたい3~4日は自由に動けます。だけど、目標としては、電気を使わない方法で、自分の体のエネルギーを使って(頭の中の)チップを充電する方法を見つけたいと考えています。チップを自分の体のエネルギーで充電する方法を見つけるのが、次の段階のうちのひとつです。血液循環か、運動エネルギーが使えそう。将来は脳が使うエネルギーでチップを充電できたらいいかも。次の目標のひとつ。外部エネルギーを使わないで、チップを充電できるようにすること、ですね。

ロス・ブライアント(記者):どのようにアイボーグは、色の音をハービソンさんに伝えるのでしょうか。

ニール・ハービソン:色にはそれぞれ、特定の周波数があります。僕は、アイボーグでそれを聞くことができます。赤外線は最も低い音、紫外線は最も高い音。そういった音の違いを、骨伝導で聞いています。つまり、音は僕の後頭部を通って、内耳に伝わり、各音の正弦波の違いを聞くことができる、というわけです。

ロス・ブライアント(記者):紫外線や赤外線も認識できるのですか?アイボーグのアップグレード版の機能になるのでしょうか。

ニール・ハービソン:以前は、アップグレードといえばソフトウェアでしたが、今はチップをアップグレードすれば良いですからね。僕たちは、人工頭脳学[訳注:による可能性や、それによってできること]を広げ、アップグレードし続けていくつもりです。使えば使うほど、感覚をアップグレードし、もっともっと知覚力を上げ続けることができるというのも、きっと、人工頭脳学の良い点なんだと思います。終わりはありませんから。それで、今僕は赤外線も紫外線も、ほぼ認識できます。だけど、次の段階ではもっと遠くからでも認識できるようにしたいです。この能力をどんどん伸ばしていって、水中の色や宇宙の色まで、聞こえるようにしたいですね。

ロス・ブライアント(記者):ティム・キャノンさんという人、それとDIYサイボーグについてはご存知ですか?ハービソンさんの考えを聞かせてください。

ニール・ハービソン:彼は、テクノロジーを利用する者として、僕らとはだいぶ異なります。テクノロジーを体に埋め込むことで知覚能力を拡張している、とは言い難いと思うんですね。 ティムは、あの装置を使って自分の体温を知ることができるけれど、それはただ単に情報を拾っているだけです。サイボーグ基金で僕たちが関心を持っているプロジェクトとは、感覚・知覚の拡張ですから。情報や能力の拡張とは違います。

エイミー・ワインハウスの「Rehab」によるサウンドポートレイト

ロス・ブライアント(記者):私たち人間とテクノロジーの関係性が変化してきていることについてはどう思いますか?未来の人工頭脳学はどうなっていくと思いますか?

ニール・ハービソン:今世紀中に起きる最大の変化は、おそらく僕らは将来、ツールとしてのテクノロジーは使わなくなると思うんです。その代わり、体の一部として、テクノロジーを用いるようになるんです。僕らの能力や、知識を増幅させるような方向に進むか、または感覚やリアリティの知覚を増強させるような使い方になるんじゃないかな。あと数年もすれば、今よりずっと世の中に浸透することになると思います。技術を利用したり、常に装着するのではなく、僕たち自身がテクノロジー化していくんです。こんなすごい方法でリアリティを知覚するなんて、人類の歴史の中でも本当にエキサイティングな時代ですよ。僕たちの本能や、身体は変化していくんです。技術を人体に取り入れていくと、体はそれに適用しようと、変化しなくてはならなくなります。体は変化して、新しく取り込んだものに順応しようとするんです。僕たちがこの変化に、どう順応していくか、とても興味がありますね。

ロス・ブライアント(記者):私たちの知覚を強化するような何かが、近い将来できると思いますか?

ニール・ハービソン:例えば、骨伝導などの、とてもシンプルなものから始まると思います。骨伝導はものすごく単純なんですけど、新しいオーディオ機器を手に入れるような、アドバンテージをもたらします。骨伝導センサーを導入すれば、いろいろな場面で利用できると思います。あとは、さまざまな理由で、人はアンテナを持つようになるでしょう。僕の場合、色彩を知覚するためにアンテナをつけていますが、ほかにももっと僕らが知覚できないいろいろなことを、アンテナを付ければ認識することができるようになるかもしれない。骨伝導によるインプットなら、他の感覚を邪魔することなく、感覚を伝えることができるので、いろいろ使い道があるんじゃないかと思います。それに、体の背面にセンサーを搭載するということ自体簡単にできますし、技術的にもシンプルです。背後に何があるかを察知するような、感覚を手に入れることも可能になります。背後に誰か近づくと、振動してそれを知らせる、360°知覚できる小さな赤外線センサーを皆が使えるようになれば、それも僕の理想ですね。それから、他にも方向感覚のようなものも。小さなコンパスを移植して、北を向けば振動するような装置があれば、きっと役に立つんじゃないかと思います。

ロス・ブライアント(記者):聞くのが好きな建築物などありますか?

ニール・ハービソン:あります!アント二・ガウディの建築を聞くのが好きです。ガウディの建築の中に表現されたすべての空間が、非常におもしろいんです。本当に、ただただミュージカルのようなんですよ。

ロス・ブライアント(記者):アイボーグを装着した状態でのパスポート写真を認めさせるための論争を経て、2004年、ついに政府公認のサイボーグとなりましたね。他にもこうした形で認められた人たちはいるのでしょうか。それともハービソンさんが初めてのケースでしょうか?

ニール・ハービソン:僕は別に一番初めの人ではないと思いますよ。ただ、イギリス政府は、僕が電子眼を装着してパスポート写真を撮ることを認めなかった、という認識で。僕は、僕の感覚の延長部であり、体の一部であるアイボーグをつけて撮った写真を使いたいという旨を主張してきました。僕の場合は、たくさん手紙を送らなくてはなりませんでした。

「City Colors: London」ニール・ハービソン
ロス・ブライアント(記者):どういったサイボーグの権利が満たされるべきだと考えますか?

ニール・ハービソン:体の一部としてテクノロジーを装着している人々にも基本的な人権を、ですね。電子機器を身に点けていると立ち入れることができない公共の場というものがあります。 だから僕たちはサイボーグの権利の保護を訴えています。こういった場所にも入場できるような権利の保護です。新しい権利を創るのではなく、本当に基本的な権利を守るんです。

ロス・ブライアント(記者):どの段階で自分はサイボーグだと感じ始めましたか?

ニール・ハービソン:自分をサイボーグだと感じるまでには、段階がありました。始めは、アイボーグから僕に何か情報を送ってきているのを感じました。それから、それが知覚だということがわかり、しばらくすると、それが感覚として伝わってきました。色彩の感覚がわかるようになったころから、僕は夢をカラーで見るようになって、この装置も僕の体の一部なんだと感じるようになりました。

ロス・ブライアント(記者):人の好きな音楽に基づいて、ファッションアイテムのデザインも手がけたと聞きましたが、本当ですか?

ニール・ハービソン:はい。いい音色の服をデザインもしました。フルコレクション手掛けたのですが、今現在特定の曲からデザインしたアイテムはネクタイ、ドレス、あとパンツのみです。どんな色を使うかによって、そのアイテムの一部がちょうど、特定の曲を奏でるようになるんです。

ロス・ブライアント(記者):将来、人工頭脳学がデザイン、アート、ファッションの世界をどのように変えていくと思いますか?

ニール・ハービソン:人工頭脳学の良い点といえば、人々に新しい感覚を与えることができる、という点があります。新しい感覚を身に点ければ、ファッションや建築、そのほか存在し得るいかなるタイプのアートにおいて、それまで探究したことがない領域で自己表現することができるようになります。それは、まったく新しい可能性、自分が何者かということを表現する新しい感性を探求するということです。




おしまい



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